電子帳簿保存法の3つの区分と改正の要点をわかりやすく解説!

1998年に施行された電子帳簿保存法。
これまで何度か改正を繰り返しており、直近では2022年1月に改正され、2年の移行期間を経て2024年1月から本格移行となります。

そして、この2022年1月の改正が、かなり大幅な改正となっています。

本稿では、2022年1月の電子帳簿保存法改正について、重要なポイントを絞って分かりやすく解説していきます。
「法改正は聞いたことあるけど、そんなに大きな改正なのを知らなかった」「そもそも電子帳簿保存法って何?」という方のお役に立てれば幸いです。

※12/20追記
令和5年度税制改正大綱が公表され、電子取引データの電子保存の猶予期間が延長、実質的に恒久化されることが決定しました。こちらの記事にて詳細を解説しておりますので、ご覧ください。


POINT

電子帳簿保存法の3つの区分とは「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」
スキャナ保存の要件が大幅に緩和
電子取引データ保存が義務化
法律に違反した場合の罰則が強化

1.電子帳簿保存法とは

1-1.電子帳簿保存法の目的

電子帳簿保存法は、もともと紙で保管することが義務付けられていた国税関係の書類や取引関係の書類を、データとして保存(電子化)する際の決まりを定めた法律です。

国としては、企業の業務効率化を促進したいという狙いがあります。業務担当者の負担を軽減することで働き方の改善にもつながりますし、紙を削減することで資源・環境問題に配慮するなど、様々な狙いが秘められています。

https://dd.youcom.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/きらりん-300x300.png

紙で書類を保管するのは大変でしょう。
業務効率化のために取引書類をペーパーレス化していこうぜ!

https://dd.youcom.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/OK-300x300.png
企業

OK!
『電子帳簿保存法』=『取引書類を電子化(ペーパーレス化)して保存する際のルールを決めた法律』ということが分かったぞ!

1-2.電子帳簿保存法の3つの区分

電子帳簿保存法には3つの『区分』というものがあります。区分とはケース(case)とかパターン(pattern)のことで、電子帳簿保存法では、書類を電子化する際に3つのケースを想定しています。いずれのケースも登場人物は「貴社」とその「取引先」です。
では、一つずつ見ていきましょう。

A.電子帳簿等保存

「電子的に作成した帳簿・決算関係書類をデータのまま保存」するケースです。
例)会計ソフト等を利用して作成した決算関係書類をそのまま電子データで保存する

https://dd.youcom.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/あおみどり-300x300.png
貴社

決算報告書つくったけど印刷せずにPDFファイルのまま保管しよっと!

B.スキャナ保存

「紙で受領・作成した書類をスキャンして画像データで保存」するケースです。
例)取引相手から受け取った領収書を、スキャンして保存する

https://dd.youcom.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/きいろ-300x300.png
取引先

こちら領収書になります!

https://dd.youcom.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/あおみどり-300x300.png
貴社

ありがとうございます!
よし、これをスキャンしてPDFとして保存しよっと!

C.電子取引データ保存

「電子的に授受した取引情報をそのままデータで保存」するケースです。
例)取引相手から電子データで受け取った領収書を電子データのまま保存する

https://dd.youcom.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/きいろ-300x300.png
取引先

こちら領収書になります!
メールにPDFで添付しています!

https://dd.youcom.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/あおみどり-300x300.png
貴社

ありがとうございます!
よし、これを印刷せずにPDFのまま保存しよっと!

以上、電子帳簿保存法における3つの区分でした。
このそれぞれの区分について、ああしろこうしろとルールを決めているのが『電子帳簿保存法』ということです。

2.2022年1月の改正での変更点

過去に何度か改正があった電子帳簿保存法ですが、2022年1月のものはかなり大幅な改正となりました。

特に大きな変更になったのが『スキャナ保存』と『電子取引データ保存』の2区分です。
それぞれの改正の内容について、要点を見ていきましょう。

2-1.『スキャナ保存』の大幅な要件緩和

取引先から紙で受け取った取引関係書類をスキャンしてデータとして保存する「スキャナ保存」ですが、実は2022年1月の改正前までは要件が厳しく導入するハードルが非常に高いものになっていました。

しかし、法改正によりそのハードルがぐっと下がりました。
以下に大きな変更点をまとめました。

変更点改正前改正後
税務署長の
事前承認手続き
3カ月前までに税務署長に申請し、
承認を受ける必要がある。
廃止

タイムスタンプの付与
領収書には受領者が自署したうえで、
経理担当者がスキャンする場合は最長2か月、
営業担当者がスキャンする場合は3営業日以内に付与する必要がある。
自署の廃止

最長2カ月or廃止
適正事務処理要件紙の原本とスキャナ画像とが同一であることを
社内や税理士等がチェックをする必要がある。
廃止

これに加えて、スキャン後の紙の書類の即時廃棄が可能になったり、優良な保存システムを導入した場合には過少申告加算税の5%軽減措置がとられるようになったりします。
法改正前に、スキャナ保存について言われていた、
「事前に税務署長に申請とか面倒…」
「タイムスタンプ3営業日以内はきつい…」
「社内でのチェック体制整えるのめちゃくちゃ大変…」
という不安・不満の声をすべて解決するかのような改正になっています。国としても、書類のペーパーレス化を推進したいという想いが見て取れますね。

https://dd.youcom.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/きらりん-300x300.png

事前申請も社内でのチェックも廃止!
タイムスタンプは最長2か月+7日以内で、システムによってはタイムスタンプもいらないよ!
スキャン後の紙はすぐに捨てても大丈夫!

https://dd.youcom.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/左上を見て考え事をする人-300x300.png
企業

そ…そんなに緩和してくれるのか…
それならうちも領収書を電子化してみようかな…?

2-2.『電子取引データ保存』の義務化

『スキャナ保存』がかなりやりやすくなった一方で、『電子取引データ保存』は義務化されることになりました。

スキャナ保存に関しては、あくまで「スキャナ保存を導入する企業はこういうルールを守ってね」というだけにすぎませんが、電子取引データ保存に関しては義務です。
「うちの企業は今まで通り書類は全部紙で保存するなら関係ない」とはなりません。

そして、この義務化の対象ですが、なんと全事業者です。

大企業だけの話ではなく、中小企業や小規模事業主・個人事業主までもが法令適用範囲内です。
改正前の電子帳簿保存法は、取引書類を電子化しない企業にとっては全く関係のない法律でしたが、今回の改正により全事業者に影響を与える法律になりました。

電子取引データ保存に関してもスキャナ保存と同じように要件があり、2022年1月の改正では同様に大幅に要件緩和されています。しかし、緩和されたとはいえその要件を満たした保存の仕方をしないと法律違反で罰則の対象になってしまいます。

今までと同じやり方で書類を管理していると、2024年1月以降は知らぬ間に法律違反をしているなんてことになる可能性も十分に考えられるため、お早目の対応をおすすめします。

https://dd.youcom.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/きらりん-300x300.png

電子取引データ保存については全員強制的にやってもらいます!

https://dd.youcom.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/あたまかかえる-300x300.png
企業

まじか…
ちゃんと調べて対応しなくちゃ…

こちらの記事で、改正電子帳簿保存法に対応する方法等についてまとめていますので、あわせてご覧ください。

2-3.罰則の強化

2022年1月の改正では電子帳簿保存法に違反した際の罰則も強化されました。
大きなものとしては以下の二つが挙げられます。

追徴課税(通常課される重加算税の額にさらに10%が加算される)
青色申告取り消し

罰則については、意図的なデータ改ざんなどの悪質な違反があった場合に適用されるイメージがありますが、2022年1月の法改正により、電子取引データ保存に対応していない企業は2024年1月以降すべて違法状態になってしまうことになりました。

万が一にも罰則を受けてしまわないように、少なくとも電子取引データ保存の要件を満たすような電子帳簿保存システムを準備・導入しておくようにしましょう。
余裕をもって対応すれば大丈夫です!

https://dd.youcom.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/きらりん-300x300.png

2024年1月から改正電子帳簿保存法に完全移行します!
なにもしないと電子取引データ保存について違反状態になってしまうため、準備はお早めに!

https://dd.youcom.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/OK-300x300.png
企業

OK!
余裕を持って対応するようにするよ!

3.まとめ

いかがでしたでしょうか。

改正電子帳簿保存法は2022年1月には施行されており、現在は2024年1月の完全移行日までの移行期間中にあります。

今回の法改正のうち主なものは、本稿で取り上げた以下の3つでした。
①スキャナ保存の要件緩和
②電子取引データ保存の義務化
③罰則の強化

特に、電子取引データ保存が義務化となる関係上、今回の法改正は全事業者に関わるものとなっています。
法改正に対応した、電子取引データ保存のシステムを導入する場合は、1日2日では導入できない場合も考えられますので、できる限りお早目の対応をおすすめします。

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