2023年12月までの2年間の宥恕期間を終え、いよいよスタートした改正電子帳簿保存法。
年末までに対応準備を終え、無事にスタートを切ることはできましたでしょうか?
本稿では、昨年末に公表された「令和6年度税制改正大綱」までの情報に基づいて、改正電帳法の最新情報、法要件の要点、そして準備が間に合わなかった方々への具体的な対策方法をご紹介します。
「改正電帳法について最新の情報を知りたい!」
「実は対応が間に合わなくて……どうすればいいのか知りたい!」
という方のお役に立てればうれしいです!
目次
1.令和6年度税制改正大綱での変更点
税制改正大綱とは、毎年年末に公表される、翌年度以降の税制改正の基本方針をまとめたもので、令和6年度税制改正大綱は2023年12月14日(火)に公表されました。
直近2年は、税制改正大綱にて大きな変更があった電子帳簿保存法でしたが、令和6年度税制改正大綱では変更点はありませんでした。
2.改正電子帳簿保存法のこれまでの経緯をおさらい
もともと、改正電子帳簿保存法は2022年1月より開始すると公表されていました。
しかし、義務化となる「電子取引データの電子保存」への対応準備が遅れているなどの理由から、令和4年度税制改正大綱にて、改正電帳法は2024年1月から本格的にスタートすることが公表されました。
このように2年間の猶予期間が設けられたものの、本格スタートまで1年と迫った2022年12月時点において、まだまだ改正法対応の準備が進んでない企業が多いという状況を鑑みて、令和5年度税制改正大綱にて、2024年1月以降も追加の猶予措置が設けられることが公表されました。この追加猶予措置の対象、法対応が間に合っていない場合の対応については、本稿の『5.法対応の準備が間に合っていない場合はどうすればいい?』にて解説しています。
3.フローチャートでわかる!書類の保存方法と守るべきルール
2024年1月以降、作成・受領した書類をどのように保存すれば良いかは、「帳簿・書類の種別」「作成・受領方法」「保存方法」の3つの要素で決まります。
書類の種別:「国税関係帳簿・決算関係書類」or「取引書類」
作成・受領方法:「電子ファイル」or「紙」
保存方法:「電子ファイル」or「紙」
ここでは、「帳簿・書類の種別」ごとのフローチャートを見ていきましょう!
3-1.国税関係帳簿・決算関係書類の場合
「国税関係帳簿」と国税関係書類のうちの「決算関係書類」については、スキャンして電子化が認められていない点に注意が必要です。
帳簿・決算関係書類を紙でファイリングする場合は従来通りの保存方法で問題ありません。
Excelや会計ソフトを利用して作成した帳簿・決算関係書類を、プリントアウトせず電子ファイルのまま保存したい場合は、電帳法の「電子帳簿等保存」のルールに従って保存する必要があります。
3-2.取引書類の場合
紙で作成・受領した取引書類を紙でファイリングする場合は従来通りの保存方法で問題ありません。
紙で作成・受領した取引書類をスキャンして電子ファイルとして保存したい場合は、電帳法の「スキャナ保存」のルールに従って保存する必要があります。
改正電帳法により、電子ファイルで作成・受領した取引書類について、プリントアウトしての保管が認められなくなりました。保存する際は、電帳法の「電子取引データ保存」のルールに従って保存する必要があります。
4.スキャナ保存・電子取引データ保存の要件を整理
それでは、2024年1月時点での「スキャナ保存」「電子取引データ保存」の要件を見ていきましょう。
4-1.スキャナ保存の要件
スキャナ保存は、保存する書類が「一般書類」か「重要書類」かで、少しだけ要件が異なる部分があります。
一般書類:お金や物の流れに直接かかわらない書類。
例)見積書、注文書、検収書など
重要書類:お金や物の流れに直接かかわる書類。
例)契約書、納品書、請求書、領収書など
以上を踏まえて、スキャナ保存の主な要件を見ていきましょう。
▼スキャナ保存の主な要件
項目 | 一般書類 | 重要書類 |
---|---|---|
解像度・カラー | 200dpi以上の解像度で読み取る必要がある。 | 200dpi以上の解像度で読み取る必要がある。 カラー画像(赤・緑・青それぞれ256階調(約1,677万色)以上)で読み取る必要がある。 |
帳簿との相互関連性 | 不要 | 書類に対応する帳簿との間で相互にその関連性を確認できる必要がある。 |
真実性の確保 | 以下の2つのうちのいずれかの条件をクリアした状態で保存する必要がある。 ①タイムスタンプを付与する ②訂正・削除ができないまたは訂正・削除の記録が確認できる | |
検索機能の確保 | 以下の3つの検索要件をすべてクリアする必要がある。 ①日付・金額・取引先名で検索できる ②日付または金額の範囲を指定して検索できる ③2つ以上の任意の項目を組み合わせて検索できる ※税務調査の際に、スキャンした書類のダウンロードの求めに応じられる場合は②③が不要 | |
見読可能装置の備付け | ディスプレイ・プリンタを備付ける必要がある。 ・ディスプレイ・プリンタともに4ポイント以上の大きさの文字を認識できること ・ディスプレイは14インチ以上であること | |
各種書類の備付け | スキャナ保存に対応したシステムのマニュアル(操作説明書など)を備付ける必要がある。 |
スキャナ保存に取り組む際には以上の要件を守って保存するようにしましょう。
一般書類と重要書類では、「解像度・カラー」と「帳簿との相互関連性」において、要件が異なる点に注意しましょう。
重要書類のほうが、一般書類に比べて保存要件が多いため、重要書類の保存要件を満たしていれば、自ずと一般書類の保存要件も満たせていることになります。
そのため、スキャナ保存に取り組む際には、「重要書類の保存要件」を満たせているかを基準に運用を行うことをおすすめします。
4-2.電子取引データ保存の要件
電子取引データ保存の主な要件は、
「可視性の確保」と「真実性の確保」の2つです。
では、それぞれについて解説していきます。
「可視性の確保」
可視性の確保をクリアするには、以下の2つの要件をどちらもクリアする必要があります。
1.モニター・操作説明書等の備付け
2.検索要件(日付・金額・取引先名で検索できること)
このうち、「2.検索要件」については、以下の条件のうちいずれかを満たしている場合は不要となります。
「2課税年度前の売上高」が5,000万円以下の事業者
電子取引データをプリントアウトして日付・取引先名ごとに整理している事業者
「真実性の確保」
以下の4つのうちのいずれかをクリアする必要があります。
1.タイムスタンプが付与された後、取引情報の授受を行う
2.取引情報の授受後、速やかにタイムスタンプを付すとともに、保存を行う者又は監督者に関する情報を確認できるようにしておく
3.記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受及び保存を行う
4.正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、その規程に沿った運用を行う
改正電帳法に対応した市販のソフトは、1~3のいずれかをクリアしているため、ソフト導入により法対応を行う場合は、真実性の確保ができているという状態になります。
市販のソフトまたは自社開発の電帳法対応システムを利用せずに対応する場合には、4の事務処理規定を定めることにより、真実性の確保をクリアするようにしましょう。
事務処理規定の作成方法の確認やひな形のダウンロードは、国税庁のホームページから行うことができます。
国税庁:電子帳簿等保存制度特設サイトはこちら
国税庁:事務処理規定のひな形ダウンロードページはこちら
5.法対応の準備が間に合っていない場合はどうすればいい?
2024年1月までに、義務化となった電子取引データの電子保存についての対応が間に合わなかった場合の対応(2024年1月以降の追加の猶予措置)について、2023年11月に国税庁からリーフレットが公表されています。
大前提として、もし電子取引データの電子保存を、電子取引データ保存の要件(可視性の確保・真実性の確保)を満たして保存できない場合でも、電子取引データは消去せずに保存しておくようにしましょう。そして、従来通り紙でファイリングして保管するようにしましょう。
そのうえで、税務調査の際に以下の2点に対応できるようにしておきましょう。
法対応できていない理由を説明できる
指定された電子取引データをすぐにプリントアウトできるように、取引先名ごとにフォルダ分けしておくなどファイルを整理しておく
6.まとめ
2024年1月から本格的にスタートを切った改正電子帳簿保存法について、最新の情報をもとに要件などを整理しました。
特に「電子取引データ保存」について、対応が間に合っていない場合でも、従来通りプリントアウトしてファイリングをすることと、電子ファイルのデータを消さずに整理整頓しておくことの2つは必ず守って保管しておくようにしましょう。
税務調査でどのくらい電子取引について調査されるのかなど、現時点では不明な点や、電子帳簿保存法についての追加・最新情報が分かり次第、またお伝えします!
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